

志望動機を書く際、「自分の長所をどうアピールすればよいか」で悩む人は多いものです。強みを単に羅列するのではなく、企業との相性や具体的なエピソードを交えることで、説得力のある志望動機になります。

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1.志望動機に長所を盛り込む重要性とは?

志望動機は、単に「その企業に入りたい理由」を伝える場ではありません。採用担当者は、応募者が自社の業務や文化にどれだけマッチしているかを見極めようとしています。その中で「長所」は、応募者の人となりを知るための重要な要素です。
特に未経験分野への転職や新卒採用では、スキルや経験よりもポテンシャルや人間性が重視されます。こうした場合、自分の長所をうまく伝えることで、「この人はうちの会社で活躍してくれそうだ」と思わせることができるのです。
また、長所は自己分析の結果でもあります。自己理解が深い人は、入社後も早期に活躍できる傾向があるため、採用担当者にとっても好印象につながるのです。
2.志望動機に入れるべき長所の選び方

自分の長所を志望動機に盛り込む際、ただ「自分が思う強み」を述べるだけでは不十分です。大切なのは、その長所が応募先企業のニーズと一致しているかどうかという点です。では、具体的にどのように選べばよいのでしょうか?

2−1.企業の求める人物像をリサーチする
まず最初にやるべきは、「企業がどんな人物を求めているのか」を明確に把握することです。具体的には、以下の情報源を活用して調べましょう。
求人票の「歓迎する人物像」や「求めるスキル」欄
→ 例:「主体的に動ける方」「チームワークを大切にできる方」など
企業の公式サイトや採用ページ
→ 経営理念やミッション、代表メッセージ、社員インタビューなどに価値観が表れています。
口コミサイトやOB訪問
→ 実際に働いている人の声から、実務で求められる特性がわかることもあります。
これらを総合して、「この企業ではどんな人が評価されるのか」「どんな行動特性を持つ人が活躍しているのか」を推測します。
2−2.自分の長所を棚卸しする
次に、自分の強みや特徴を整理していきます。以下のような方法で棚卸しを行いましょう。
過去の経験を時系列で振り返る(学生時代・アルバイト・職務経験など)
他人から褒められたこと、評価されたことを書き出す
自分で自信を持っている行動や考え方をピックアップする
このとき、ただ「明るい」「真面目」などの抽象的なワードではなく、「問題を前向きに捉えて行動できる」「人の話を傾聴し、信頼関係を築ける」といった“行動につながる強み”に言い換えておくと、後で志望動機に組み込みやすくなります。
2−3.自分の長所と企業ニーズの接点を探す
リサーチと棚卸しの結果をもとに、企業が求める人物像と自分の長所の共通点・接点を探しましょう。
たとえば:
求人に「変化に柔軟な方歓迎」とある → 自分の「柔軟性」「適応力」と合致
求人に「チームでの協働が重要」とある → 自分の「協調性」「コミュニケーション力」と合致
求人に「主体的に業務に取り組める方」→ 自分の「行動力」「主体性」と合致
このように、相手の“欲しい”と自分の“持っている”をすり合わせることで、採用担当者に「この人はうちで活躍してくれそうだ」と思わせることができます。
2−4.長所は“ひとつ”に絞るのが効果的
あれもこれもと複数の長所を盛り込みたくなるかもしれませんが、印象に残るためには「ひとつの長所を深掘り」する方が有効です。特に志望動機では、限られた文字数・時間の中で自分を表現する必要があるため、軸を一つに定めて、具体的なエピソードで肉付けするのがベストです。
このように、「選び方のポイント」は単なる自己アピールではなく、企業目線で自分の長所を再定義する作業とも言えます。相手のニーズと自分の強みが自然にリンクするような構成を意識して選定していくことが、内定につながる志望動機を作る第一歩となります。
3.志望動機で使える長所の具体例

志望動機において長所を効果的に伝えるには、自分の強みを「どのように仕事に活かせるか」を明確に示す必要があります。ここでは、実際に志望動機でよく使われる長所をテーマごとに分類し、それぞれがどんな職種・企業で評価されやすいのか、どのように表現すれば良いのかを具体的に解説します。
3−1.コミュニケーション能力
特徴と活かし方:
相手の話をよく聞き、適切に伝える力は、営業、接客、チーム業務などあらゆる業務に必要とされる基本スキルです。単に「話すのが得意」ではなく、「信頼関係を築ける」「相手に安心感を与えられる」といった点を加えると、より具体的に伝わります。
活かせる職種:
営業職、カスタマーサポート、広報、人事、接客業など
表現例:
「相手の立場に立って考えることを大切にしており、前職では顧客との信頼関係を築くことで契約率を20%向上させました。」
3−2.主体性・行動力
特徴と活かし方:
自ら課題を見つけて動ける力は、特に変化の激しい業界や裁量の大きい職種で求められます。新しい提案をした経験や、自発的な行動が成果につながったエピソードがあると説得力が増します。
活かせる職種:
営業、企画、ベンチャー企業全般、マーケティング職など
表現例:
「自ら課題を見つけ、改善提案を行うことで業務の効率化に貢献し、チームの作業時間を月10時間削減することができました。」
3−3.協調性・チームワーク
特徴と活かし方:
チームで働く職場では、自分の意見を主張しつつ、他人と協調する姿勢が重要視されます。役割分担や対立の調整など、チーム内での具体的な貢献がアピールポイントになります。
活かせる職種:
事務、営業アシスタント、総務、人材系、製造業の現場など
表現例:
「ゼミでの共同研究では、意見の違いがある中で双方の意見をまとめ、リーダーとしてチーム全体を成功に導きました。」
3−4.粘り強さ・継続力
特徴と活かし方:
困難な状況でも諦めずに努力を続けられる力は、長期的なプロジェクトや専門性が求められる職種で評価されます。失敗から学び、成長した経験を交えると信頼感が増します。
活かせる職種:
エンジニア、研究職、事務、営業(長期的に顧客と向き合う)など
表現例:
「資格取得に2度失敗したものの、あきらめずに学習を継続し、3度目で合格を果たしました。この経験から、困難にも前向きに取り組む姿勢を身につけました。」
3−5.向上心・学習意欲
特徴と活かし方:
環境の変化や新しい技術に柔軟に対応するためには、常に学ぶ姿勢が重要です。仕事以外で学んでいる内容や、成長のために取った行動を含めて語ると、説得力が高まります。
活かせる職種:
IT系、コンサル、技術職、未経験からのキャリアチェンジを狙う職種など
表現例:
「業務で必要になると考え、独学でExcel VBAを学び、部内の定型業務の自動化を実現しました。」
3−6.計画性・管理能力
特徴と活かし方:
業務を効率よく進めるために必要な力であり、納期やスケジュールの厳守が求められる職場では特に重宝されます。目標設定や工程管理を行った経験を絡めて伝えるのが効果的です。
活かせる職種:
事務、プロジェクトマネジメント、経営企画、製造業など
表現例:
「学園祭実行委員として、全体スケジュールを管理し、当日の準備を滞りなく進行できた経験があります。」
3−7.柔軟性・適応力
特徴と活かし方:
環境の変化や新しい状況に対してすぐに対応できる力は、業界や職種を問わず求められます。特に複数の業務を同時にこなすような職場で役立ちます。
活かせる職種:
ベンチャー企業、接客、カスタマーサポート、営業支援など
表現例:
「アルバイト先で担当業務が変更された際も、すぐに新しい業務を習得し、数週間後には新人指導も任されるようになりました。」
このように、長所はただ「○○が得意です」と伝えるだけでなく、「どうやってそれを発揮してきたか」「企業の業務にどう役立つか」を結びつけることで、採用担当者の心に響く志望動機に仕上がります。自身の経験と照らし合わせて、相手に伝わる言葉でアピールすることが大切です。
4.志望動機で長所を伝える際のNG例と注意点

志望動機に長所を盛り込むのは、自己アピールとして非常に有効です。しかし、伝え方を誤ると逆効果になりかねません。せっかくの強みも、適切に表現しなければ「自慢」「ズレている」「抽象的」といった印象を与え、マイナス評価につながってしまいます。ここでは、よくあるNG例と、その改善ポイントを具体的に紹介します。
4−1.NG例①:抽象的すぎて伝わらない
悪い例:
「私の長所は責任感があることです。」
一見、無難でポジティブな表現ですが、これだけでは何を根拠にそう言っているのか、具体的にどのような行動が「責任感」と言えるのかが全く伝わりません。
改善例:
「アルバイト先でレジ担当を任されていた際、金銭の扱いに細心の注意を払い、1年間一度もミスなく対応しました。責任感のある行動を続けたことで、最終的には新人指導も任されるようになりました。」
ポイント:
抽象的な長所だけでなく、「行動」や「成果」で裏付けることが必要です。
4−2.NG例②:企業ニーズとズレている
悪い例:
「私は慎重な性格が長所です。」
→スタートアップ企業や営業職など、スピード感と行動力が求められる職場では不向きな印象を与える可能性があります。
改善例:
「重要な判断をする際には事前に複数の選択肢を検討し、リスクを最小限に抑えるよう努めています。慎重な判断力を活かして、確実な成果を出せることが私の強みです。」
ポイント:
企業の求める人物像と、自分の長所の「一致度」を意識する。ズレを感じさせないように、業務にどう貢献できるかを具体的に示す。
4−3.NG例③:ただの自慢話になっている
悪い例:
「私は営業で社内1位の成績を取りました。何をやっても成功します。」
→成果を語るのは良いことですが、謙虚さに欠けると「協調性がなさそう」「扱いづらそう」という印象を与えてしまいます。
改善例:
「前職では営業成績1位を獲得しましたが、その背景にはお客様の声に耳を傾け、チームと連携して最適な提案を行ったことがあります。個人の成果以上に、周囲と協力する姿勢を大切にしています。」
ポイント:
成果は“チーム貢献”や“姿勢”とセットで語る。謙虚さを忘れずに。
4−4.NG例④:長所が盛り込みすぎて焦点がぼやける
悪い例:
「私の長所はコミュニケーション能力と計画性と責任感と柔軟性です。」
→多くの長所をアピールしようとすると、結局どれも印象に残らなくなります。読み手の記憶に残るのは「一貫性」です。
改善例:
「私は計画的に物事を進めるのが得意で、特にチームでのプロジェクト管理においてその強みを発揮してきました。」
ポイント:
アピールする長所は1〜2個に絞り、「何が一番の強みか」を明確にすることが大切です。
4−5.NG例⑤:実体験と結びついていない
悪い例:
「私の長所は向上心があることです。もっと成長したいと思っています。」
→“思い”だけでは評価されません。どんな行動にそれが現れているのかが重要です。
改善例:
「業務に必要なスキルを身につけるために、就業後にプログラミングスクールに通い、半年後には社内システム改善プロジェクトに参加できるようになりました。」
ポイント:
「何をしたか(行動)」を必ずセットにし、言葉にリアリティを持たせましょう。
4−6.長所を伝えるときのチェックリスト
最後に、長所を志望動機に盛り込む前に、以下の点をチェックしてみましょう。
☑︎その長所は企業が求める人物像に合っているか?
☑︎抽象的ではなく、具体的なエピソードで裏付けられているか?
☑︎伝え方に謙虚さがあるか?自慢話になっていないか?
☑︎長所が多すぎて焦点がぼやけていないか?
☑︎行動や成果と一貫性をもってつながっているか?
これらを意識することで、伝わる志望動機に仕上がり、採用担当者の印象に残る内容となります。長所は自分の魅力を伝える最大の武器です。使い方を誤らず、適切に表現することで、内定への道がグッと近づくでしょう。
5.志望動機に長所を自然に組み込むテンプレート

志望動機に長所を盛り込む際、大切なのは「自然さ」と「論理的な流れ」です。長所を前面に押し出しすぎると自己PRのようになってしまい、企業への志望意欲が弱く見えてしまいます。逆に、企業への熱意だけで構成されると、自分がどんな人物でどう貢献できるのかが見えづらくなります。
そこで有効なのが、「長所」→「具体的な経験」→「志望理由」→「今後の貢献」の流れで構成する一貫性のあるテンプレートです。
テンプレート構成:
自分の長所を一言で述べる
→「私の強みは○○です。」
その長所が発揮された具体的なエピソードを紹介する
→「○○の場面で△△を行い、□□という成果を得ました。」
その経験と応募先企業の仕事の共通点を示す
→「この経験は貴社が取り組まれている○○においても活かせると考えています。」
今後どのように貢献したいかを述べる
→「自分の強みを活かして、貴社の□□に貢献したいと考え、志望いたしました。」
使用例:
「私の強みは、相手の立場に立って考えられるコミュニケーション力です。大学時代にはイベントの運営チームに所属し、来場者のニーズを細かくヒアリングし、アンケート満足度を前年より20%向上させました。この経験は、貴社の営業職として顧客ニーズを正確に汲み取り、提案に反映させる場面でも活かせると考えています。今後はこの強みを武器に、顧客満足度の向上と売上拡大に貢献してまいります。」
このように、長所を自然な形で志望動機に取り込むことで、読み手にも説得力をもって伝えることができます。
6.長所を活かした志望動機の例文集(職種別)


6−1.【営業職】向け:コミュニケーション能力を活かす
「私の強みは、相手の話を丁寧に聞き、信頼関係を築くコミュニケーション力です。前職のアパレル販売では、接客時の会話からお客様のニーズを引き出し、リピーター獲得数で店舗トップの実績をあげました。御社の営業職では、お客様との信頼構築を土台に、最適な提案を行い、長期的な関係性を築く営業スタイルを実現したいと考えています。」
6−2.【事務職】向け:正確性と計画性をアピール
「私の長所は、正確性と計画的に物事を進める力です。大学ではゼミ活動の事務作業を担当し、毎月の議事録やスケジュールをミスなく管理し続けた結果、メンバー全体の作業効率が向上しました。御社の事務職においても、細部まで丁寧に対応しながら、日々の業務を円滑に支える役割を果たしていきたいと考えております。」
6−3.【エンジニア職】向け:粘り強さと課題解決力を強調
「私の長所は、粘り強く課題に向き合う姿勢です。プログラミング学習中、どうしても解けないバグに2週間取り組み続けた経験があり、その問題を解決したことで理解力と自信が深まりました。御社のエンジニアとしても、問題発見から改善提案までを粘り強く行い、製品の品質向上に貢献していきたいと考えています。」
6−4.【接客・販売職】向け:気配りと柔軟な対応力をアピール
「私の強みは、相手の立場に立った気配りと、状況に応じた柔軟な対応力です。カフェでのアルバイト経験では、お客様の小さな変化にも気づき、声かけやサービス改善に努めた結果、『またこの店員さんに会いたい』との声を多くいただきました。御社でもお客様一人ひとりに寄り添った接客を通じて、ブランド価値の向上に貢献したいと考えています。」
6−5.【企画・マーケティング職】向け:アイデア発想力と実行力を示す
「私の長所は、柔軟な発想とそれを行動に移す実行力です。大学時代にはSNSを活用したサークルの集客施策を立案し、フォロワー数を3ヶ月で2倍に増やすことができました。この経験を活かし、御社のマーケティング領域でも、新しい視点からの企画提案とPDCAの推進に積極的に取り組んでいきたいと考えています。」
これらの例文は、テンプレートに沿って構成されており、誰でも自分の経験と組み合わせてカスタマイズしやすい形に仕上げています。職種に合った長所を選び、自分らしさを加えて表現すれば、面接官の印象にも残る強い志望動機となるでしょう。
7.志望動機における長所の書き方まとめ
志望動機において長所を活かすためには、「企業とのマッチ」「具体的なエピソード」「自然な構成」の3点が欠かせません。テンプレートや例文を参考にしながら、自分自身の経験に基づいたオリジナルの文章を組み立てていきましょう。
最終チェックリスト:
長所は企業のニーズに合っているか?
長所を裏付ける具体的なエピソードがあるか?
自分の成長意欲や貢献姿勢が伝わっているか?
これらを押さえれば、採用担当者の印象に残る「強い志望動機」が完成します。
志望動機に自分の長所を盛り込むことは、採用担当者にあなたの人柄や能力、企業とのマッチ度を伝える絶好の機会です。

長所の選び方から、NG例、自然な組み込み方のテンプレート、職種別の例文までを活用し、自分自身の魅力を的確に表現できる志望動機を作成しましょう。しっかりと準備をすれば、面接官の印象に残るアピールができ、内定への一歩を確実に近づけることができます。